もひょもひょしたブログ

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SNSの人

まえがき

SNSで個人情報がほとんどわからない人っていますよね。インターネットリテラシーが優秀な人です。
そういう人がオフ会に参加しても、なぜかその人の情報が少しも流れないみたいなことってありませんか?
それはきっと周りの人のインターネットリテラシーも高いからでしょう。
でも、もしも個人情報がわからない理由が、インターネットリテラシーに関係ないのだとしたら……。
さて、どうでしょう?


SNSの人

 そのオフ会はSNSで昔から知り合いだったGAOさんの主催で開催されました。オフ会とは、インターネット上で出会った人たちがオフライン、つまり現実世界で一同に会する企画のことです。オフ会自体は、ネットワーク全盛期においてさほど珍しくもないイベントでした。
 オフ会のメンバーはそれぞれお互いに名前を知っている相手で、それなりに仲も良く、楽しくご飯でも食べて終わるだろうと、そう思っていました。
 しかし、集合時間を過ぎてもGAOさんが来ることはありませんでした。SNSでは確かに「着いた」と発言しているのにも関わらず、彼、あるいは彼女は姿を現さなかったのです。その時点で何かがおかしいなと感じたのですが、その場の雰囲気に流されて何も言えず、ひとまずご飯を食べながら待とうということになりました。
 
 話はオフ会終わりまで飛びます。オフ会は終始和やかに進み、そのまま二次会のカラオケまで行って解散となりました。私は充実感とともに帰路につきます。そのまま電車に乗り込んだ私は、いつも通りスマートフォンを取り出し、イヤフォンを耳につけ、お気に入りの音楽とともにSNSを開きました。
 そしてオフ会参加者に向けて「今日は楽しかったです!」と、そんな風なことを発言しました。そこへGAOさんから返信が送られてきます。「今日は来てくれてありがとうございました!またやりましょう」と。私はすかさず返信しました。

「いえいえ。いつか会ってみたかったGAOさんに会えて良かったです!」

 そこで気付きました。なぜか私の中では、GAOさんとオフ会をしたことになっていたのです。オフ会の始まりから最後まで、結局後から来た人は一人もいなかったのにも関わらず、私の記憶の中には、確かに彼、あるいは彼女がいました。オフ会をしたという事実のみがあり、そこに実体はない。まるで狸に化かされたかのようなその感覚は、空恐ろしくありました。慌てて今日会った人たちに連絡をとると、みんなGAOさんと会ったという事実だけ記憶にあり、しかしそれ以外の確固たる何かが存在しない状態にありました。

 果たしてGAOさんはいたのか、それとも私たちの中の誰かだったのか。あるいは――これは荒唐無稽な推測ですが――あるいは私自身だったのか。それは未だにわかりません。これからも、誰にもわからないのでしょう。これはきっと、そういうものだったのです。



おわり

※当記事はフィクションです。実在する人物とはなんら一切これっぽっちも関係ありません。